
採用は縁といわれますが、求職者として本当に入りたい会社から信頼を得ようと思うとそれなりの準備が必要です。企業からの募集要項を見て、面接は熱意だけで押し切る、というのでは正直いって準備不足だと思います。
企業もそういう人を採用するほどアホじゃなくて、面接官はちゃんと相手のことを見ています。そういった「企業が人材を見極める姿勢」に対して自分なりに誠意をもって応えようとするのが面接対策だと私は思います。
今日は就職・転職活動を頑張るみなさんのために、私が以前外資系のIT企業 Yelpから採用をゲットしたときに実践した手法を紹介します。これから採用面接を控えている方はぜひ参考にしていただけたらと思います。ぜひこの手法を活用して、相手の心を掴めるようになりましょう。
なお今回ご紹介する例は、企画・マーケティング関連職の採用プロセスにてうまくいった事例になります。エンジニア職の場合は勝手が違うと思いますので、その辺はご了承ください。それではどうぞ。
他の人と差がつく面接対策の手順
企業分析
希望職種に応募したら、入りたい会社の募集要項を詳しく見て面接対策をする!と考えがちだと思いますが、いきなり面接対策をするのではなく、まずはその会社の企業分析をします。具体例があったほうがいいと思うので、今回は成長著しいSaas企業 Sansan株式会社を題材に企業分析を進めていきます。(Yelpだと資料が英語というだけでなく財務諸表の構造が日本と少し違うため説明が難しくなります、すいません)
“ざっくり” 財務分析をする
財務分析というと難しく聞こえますが、抑えるポイントは以下の4つです。
- 業績は伸びているか?
- 儲かっているか?
- コスト構造は?
- お金回ってるか?
Sansan株式会社の決算情報から”ざっくり” 財務分析してみます。なお、財務分析には無料の分析ツール バフェットコードを使用します。
業績は伸びているか?
バフェットコードの業績サマリーによると、2020年分の業績は予測値になっていますが、2018年、2019年では成長していることがわかります。3年間のGACR(年平均成長率)が予測値ベースで37.3%なので、かなりのスピードで成長していることがわかります。
儲かっているか?
本業の利益を示す営業利益、という観点ではこれから儲かり始めるか、というところですが、そもそもこのビジネスは粗利率が非常に高いことがデータからわかりますね。なんと粗利率80%以上!
コスト構造は?
次にコスト構造です。コスト構造では売上に占める販管費率を見るようにしています。なぜかというと販管費の中には人件費や広告費が含まれるので、そこを出し惜しみしていないか、会社として宣伝を頑張っているか、という観点で見るべき指標だからです。
Sansanの場合は、事業が成長期ということもあって粗利額以上の販管費を費やしており、会社として相当攻めているということがわかります。テレビCMなど大量にうっているのでその数字が顕著に現れています。
決算発表の資料でも採用強化を発表しているので、人材にも投資する姿勢が伺えます。
お金回ってるか?
次にリアルなお金の動きをみていきます。これはキャッシュフロー計算書をみて把握します。
優良な企業は「本業で儲けて」「未来に投資して」「借りたお金を返済、または配当で儲けを投資家に還元する」ということをしています。
それをキャッシュフロー計算書で表すと、
- 営業CF:プラス
- 投資CF:マイナス
- 財務CF:マイナス
という風になります。詳しく知りたい方はこちらの記事↓を読んでみてください。
グロービスで「アカウンティング基礎」「アカウンティングI(財務会計)」の授業を2つとってから、「数字を読む力」が身につきました!これによって企業分析がざっくりとできるようになったので、日々の仕事にも活かせるようになりまし …
Sansanのキャッシュフロー計算書はこんな感じです。
2019年の実績だと
- 営業CF:プラス
- 投資CF:マイナス
- 財務CF:プラス
となっていますね。グラフの大きさからすると、本業で儲かった分以上に投資をして、株式発行や銀行借入で大きく資金調達していることになります。実際に財務CFの内訳をみてもそのようになっていました。Sansanは継続的な成長のためにお金が必要で、借入などを強化してお金をガッツリ回している時期、ということですね。
ということで、”ざっくり” 財務分析でわかったことは
- 業績は伸びているか?:めちゃ伸びている
- 儲かっているか?:粗利がすごい、営利ベースでは儲かり始めた
- コスト構造は?:宣伝にかなりのお金を注ぎ込んでいる。積極採用していて人材への投資も頑張っている
- お金回ってるか?:資金調達をしてどんどん回している
となり、端的にいうとかなり攻めのフェーズにいるということがわかりました。
次に決算発表資料の主要なポイントをみて、会社がどこに向かっているのかを分析します。
決算発表資料分析
Sansan 決算発表資料には主な成長戦略を示しているページがあるので、そこから今後の方向性を知ることができます。
契約件数 & 契約あたり売上の拡大
この資料にあるように、今後会社としては件数、契約あたり売上を両方とも上げていくことを目指しています。契約あたり売上に関しては4年で2倍になっているので、これをさらに伸ばしていくということみたいです。
Sansanは大手企業からの売上が全体の42%を占めていて、それが契約あたり売上の増加につながっていることが資料から読み取れます。
ビジネスプラットフォームになる
またもう一つの成長戦略としてプロダクトのビジネスプラットフォーム化を目指していることもわかりました。名刺管理ツールという枠を超えて、Sansanを中心に色々なビジネスツールと連携することで企業が使い続けるプロダクトになろうとしている、ということですね。
ということで、会社がどこに向かっているのかということに対する答えは「契約数 & 売上拡大、ビジネスプラットフォーム化」ということになります。
決算発表資料では、これkらも成長を続けるために頑張っている会社ということがわかったのですが、実際中の人はどういう感じの人なのでしょうか?気になりませんか?
そんな時に役立つのがYouTubeでの企業メッセージ調査です。
企業メッセージ調査
YouTubeにはいろんな企業の社長インタビューがアップされていて、そのコンテンツからも企業姿勢を知ることができます。ぜひみなさんが働きたい企業の動画も検索してみてください。企業名 + 社長名で検索するなどするといろいろ出てきますよ。
今回もそのやり方で動画を検索すると、こんな動画が出てきました↓。こういう動画から企業がどんなことを大切にしているのかを知るようにしましょう。
こういう分析作業を経て、ようやく面接準備にとりかかります。次に行うのは募集要項分析です。
募集要項分析
募集要項分析では、その内容と自分の実務経験のすり合わせを行います。
私はSansanの面接は受けたことがないのでw 実際に採用してもらったYelpを応募した時に行ったことを事例として紹介します。Yelpの前にはSaas系のメッセージサービスを開発する企業でB2Bマーケティングをしていました。その時の実務経験とYelpのコミュニティマネージャー職をすり合わせる例になります。
実際にすり合わせをしたところ以下のようになり、
- 企業向けのサービス普及から消費者向けのサービス普及になるという点
- 英語力が必要という点
に大きな違いがありましたが、本質的には近い実務に従事していたことがわかりました。
この分析を踏まえて、この後は「自分がYelpに提供できる価値」をまとめる作業に入ります。
自分の提供価値をまとめる
自分の提供価値とは、
「過去の実務経験からその企業にどういう価値を提供できるのか」
です。それをわかりやすい言葉にすることが必要です。わかりやすくないと面接官もアナタのことをどう判断して良いかわからなくなるので、時間がかかっても言葉に落とし込みましょう。
私の例でいうと、提供価値は以下のようになります。
私の提供価値は…
- サービスをゼロから立ち上げる大変さを経験しているため、必要なアクションがわかる
- ユーザーさんを巻き込んでサービスを普及していく、いいプロダクトにしていくために必要な動きができる
- デジタルチャネルの活用も含めてユーザーさんと関係を構築することができる
- それらの経験を英語でコミュニケーションしながらビジネスを進めていくことができる
自分でないといけない理由も考える
ここまで考えたら「その職種が自分でないといけない理由」についても考えておくことが大切です。
冷静に考えたらそのポジションが自分である必要はないのですがw そういうことではなく「自分としてはこれぐらいこのポジションに情熱をもって取り組むことができる」ということを伝える努力をするということです。
例えば、
- マーケティングの仕事を通じて自分がどのように人として成長できたか
- 昔はどんなことができなくて、仕事を通じて今はどんなことができるようになったか
- このチャンスを得ることができないと自分はどう感じるのか
こういうことを熱心に伝えると、相手の心を動かすことができます。
ここまで考えることができたら、面接対策は完了になります。あとは知人などに話してみて自分の頭の中を整理できれば準備完了です!
なぜこの手順が必要なのか?
…と、ここまで長々と説明してきましたが、ここで「なぜこの手順が必要なのか?」ということについても触れておきたいと思います。
この手順が必要な理由は、面接官が面接時に見ているポイントが以下の3つだからです。
面接官が面接時に見ているポイント
問題解決能力
どういうことを問題と感じて、それを解決するためにどのような仮説を立ててどのようにアクションをしたか。その時にどんな成功と失敗を経験したか。面接官はその試行錯誤のプロセス知りたいと思っています。
紹介するエピソードはいい話ばかりでなくてもいいと思います。自分の経験を振り返って、正直に話すことが必要だと思います。少なくとも私はそうやってYelpの厳しい面接をクリアしました。
先回り力
面接を熱意だけで押し切る人は、先回り力がない人です。面接官はどういう準備をしてきているのか、募集要項に対してアナタ自身の経験がどこまでマッチするかを先回りして考えているかどうかを見ています。
全く同じ経験をしていなかったとしても、「現職でのAという経験が、御社のこのミッションに役立ちそうですか?」と聞く姿勢があれば、その姿勢自体が先回り力があるということになると思います。
その職責への情熱
問題解決能力と先回り力が面接官に伝わってあってはじめてアナタの情熱が伝わるのです。自分はそのポジションで働くチャンスを得たい!ということの裏付けは、
- アナタがどれだけ会社のことを知ろうとしているのか
- どれだけその事業を理解しようとしているのか
- その会社が実現したい未来に共感するのか
- 中の人のメッセージをどのように感じるのか
- これまでの実績で価値を提供できるのか
- その仕事が好きか、好きになれそうか
これらのことが自分の言葉で説明できるかどうか、ということになります。そしてこれはまさに今回紹介した手順のすべてになるわけです。お分かりいただけたでしょうか?
まとめ
いかがでしたか?最初は時間がかかって難しく感じることもあるかもしれませんが、よかったら今日紹介した手順で参考になる点を実践してみてください。きっとアナタの未来に役に立つと思います。
実は今日紹介した手順のうち企業分析は、面接だけでなく商談準備にも活用できますので、このお客さんの心を掴みたい!と思った時はぜひ実践してみてくださいね。
みなさんのビジネスライフがポジティブになることを願っています。お互い頑張りましょう!