
「無料:MBAでアカウンティングを学ぶ人におすすめの動画とツール」にて紹介した泥沼にはまって以来w、財務分析によって明らかになる企業の強みや弱み、ビジネスモデルの奥深さを知ることが楽しくなってきました。
その後、自分のできる範囲でいろんな業界の決算書や有価証券報告書を読んでは企業分析のトレーニングをしています。その中で色々とわかってきたことがあるので、解説記事を書いていきたいと思います。
今日は企業分析の視点でみた「売上高の重要性」について紹介します。
企業分析の視点でみた売上の重要性
昔の勤務先で上司がこんなことを語っていました。
売上は市場からの信頼の証で、利益は社内の創意工夫の結果である。
当時はこの言葉が意味することがまったくわかりませんでした。でもその後ビジネス経験を積んでいく中で、この考え方はビジネス世界で通じる普遍的な考えなんだということが理解できました。
つまり、企業分析の視点でみた売上とは「企業の成長そのもの」ということになり、投資家をはじめ、その企業のすべてのステークホルダーが関心を持つ超重要な経営指標になります。
なぜ利益ではなく売上が重要なのか?
上の説明を聞いて「いやそんなことはない。売上が大きくなくても利益さえ上がっていればそれでいいはず」と考える人もいると思いますが、そんなことはありません。売上に注目することをオススメします。その理由は以下の図になります。
企業活動では、上の図のようにいろんな損益の勘定を経て最終的な「純利益」が決定しますが、売上高の規模が大きくならないと利益も上げにくい構造になってしまいます。そのため、売上の成長度合いが高い企業が利益の拡大も見込めるという点で注目されることが多いです。
企業が売上を伸ばす方法
では企業が売上を伸ばす方法にはどんなものがあるでしょうか?基本的には以下の3つがあると思います。それぞれ事例をもとに説明します。
1. 業界内でシェアを拡大する
業界でトップシェア企業になると、市場のリーダとして市場規模の拡大を目指したり、その市場における価格決定権を持つようになります。ちょっと馴染みが薄いかもしれませんが、シュリンクラベルの国内市場シェア60%を持つ「フジシールインターナショナル」は業界トップメーカーとして同市場に君臨しています。
以下の図によると同社のシュリンクラベル売上が906億円なので、市場規模は2,265億円ということになります。そう考えると60%という市場シェアがいかに大きいかということが分かりますね。
2. 既存市場を新商品で置き換える
これは元々あった市場の中でイノベーション(技術革新)を武器に戦い、売上を拡大するタイプの戦略になります。証券業界の例を紹介します。
1998年に政府の規制緩和によってインターネット証券会社の市場参入がありましたが、あれから20数年経った今年、ついにネット専業のSBIホールディングスが、野村証券の口座数を超えるというニュースがありました。それがこちらです。
野村証券との比較ではありませんが、SBIホールディングスは主要インターネット証券各社の中でもダントツの売上規模になります。1,240億円の収益ですね。
3. 新市場で売上をあげる
こちらはこれまでになかった市場を作り上げ、売上をあげていくという戦略になります。この戦略はインターネットサービス関連企業の動きでよく見られます。
最近の話だとメルカリが一番の成功事例じゃないでしょうか。メルカリのようなマーケットプレイス型の企業では、流通取引総額を経営指標にしています。英語ではGMV(Gross Merchandise Volume)といいますので、覚えておきましょう。
メルカリは国内だけでなくアメリカでも事業を行っているので、新市場(海外)で売上をあげていると捉えることもできます。ビジネスの現場で「ヨコ展開」といういい方がありますが、まさにヨコ展開の事例だと思います。
売上高分析のコツ
ではここからは企業分析にて行う売上高分析のコツについて触れておきたいと思います。
投資家目線でも経済ジャーナリスト目線でもやはり増収率が注目されています。増収率は企業の成長性を示す端的な指標で、以下のような指標があることを覚えておきましょう。
昨年対比売上高成長率
決算説明会の資料ではYoY(Year over Year)という表現がよく使われますが、昨年対比でどれぐらい成長したかというものです。先ほど紹介したメルカリの資料にもYoYは使われているので確認しみてください。
個人的な感覚だとYoY 10%で成長、YoY 20%以上で急成長と捉えるようにしています。
投資本の「会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方」では、20%の売上成長が4年続くと、
- 0年後:100億
- 1年後:120億
- 2年後:144億
- 3年後:173億
- 4年後:208億
という風に倍になることから、20%の増収は急成長と定義しているそうです。目安として覚えておきたいですね。
年平均成長率(CAGR)
また一定期間に平均どれぐらい成長したかを示す指標に年平均成長率(CAGR)というのがあります。急成長している企業がその成長性をアピーする際に使っています。クラウドソリューション事業のテラスカイ社の決算資料が参考になるので紹介します。
まとめ
ということでまとめると、以下の通りです。
- 企業分析の視点でみた売上とは「企業の成長そのもの」であり、超重要
- 利益の厳選になるのは売上高だから、利益率や額だけで企業を評価しないほうがいい
- 売上拡大には以下の戦略がある
- 業界内でシェアを拡大する
- 既存市場を新商品で置き換える
- 新市場で売上をあげる
- 売上分析のコツ
- YoY 10%で成長、20%で急成長
- さらに有効な指標にCAGRがある
これから企業分析する際は増収率に注目していきましょう!