2023.2.8異文化理解

日本のベンチャー経営者が海外レストランで出禁をくらった話

italian restaurant

なかなかショッキングな件名になってしまいましたが、10年ほど前に訪れたアメリカ出張での話です。グローバルビジネスに関わっている方であれば、この話から学ぶべきことはいろいろあると思うので、ぜひ参考にしみてください。

アメリカ展示会での日本企業、経営者との出会い

当時出張で訪れたアメリカのIT系展示会にて、自社プロダクトを展示しプロモーションするため、ブースに立ちました。日本企業数社の参加に加え、日本のTech系メディア各社、ベンチャー経営者の視察訪問もありました。同じ展示会でいろいろなことを経験するため、当然みなさんと仲良くなっていき、展示会が終わるとみんなで飲みに行こうという話になりました。結局10名ほどの参加になったため、現地のイタリアンレストランを予約し、そこに向かいました。

イタリア料理店にてトラブル発生

着くなり店内を見渡すと、高級感漂い、大人たちが静かに会話を楽しみながら食事をしていました。我々団体客は広めの席に通されましたが、席に着くなり、座らず経営者同士が名刺交換をはじめてしまいました。世間話なども手伝って20分ほどその場は落ち着かず、ウェイターの人が何度も席に戻り注文を促すも、多くの人は無視して会話を続けていました。

サービス提供できない店側は痺れを切らし、いい加減にしてほしいと注意するまでになってしまいました。一部始終を見ていた私も、店員さんと同じように着席して他の客に配慮しようとその人たちに働きかけましたが、名刺交換ラッシュは落ち着くことはありませんでした。

その後、我々は店の中で一番騒がしいグループになってしまい、退出時に店舗スタッフより「二度と来ないでください」と言われてしまいました。帰りに「出禁をくらったことを旅の土産話にしよう」とドヤ顔で話す経営者もいて、私は正直この場に参加したことをとても後悔しました。飲み会の途中で、私が自発的に参加者に周囲へ配慮すべきことを伝え、店内での行動を改めてもらうことはできなかったか、と反省しながらホテルに戻りました。

何が問題だったか

さて、このエピソードの何が問題だったのでしょうか?私は「それは経営者の資質の問題だろう」と決めつけるのは、少しもったいない気がするため、少し立ち止まって考えたいと思います。いろんな方向で分析できる話だと思いますが、私は2つの問題があると考えます。

問題その1:その経営者グループが無知だったこと

まず1つ目は、この経営者グループが無知だったことです。ここでは2つの無知があります。1つは「その人たちにとって従来通りの会食マナーを海外でもそのまま踏襲していた」ことと「アメリカのレストランマナーを知らなかった」ということが無知になります。自分たちなりの常識がどの環境でも通じると思っていたから、従来通りの会食マナーでいいと勘違いしていたし、現地のマナーを知ろうとしなかった、ということなのかもしれません。またはそんなことすら考えていなかったのかもしれません。

アメリカのレストラン業界はティップ制が主流です。顧客の要望に柔軟に、なるべく早く対応するなどの顧客サービスを提供する対価として、ティップを貰うことが一般的です。そしてティップは、ウェイター/ウェイトレスの収入源の一つになっています。

顧客サービスの中には、店内の雰囲気を良い状態に保つことも含まれます。よってレストラン側の意図にそぐわない客に対して、スタッフが毅然と対応することもあります。SNSでそんなシーンが切り取られた動画を見たことがある方もいると思います。

アメリカのレストラン業界が大切にしているこのような価値観は、旅行サイトなどで事前に調べることができるし、現地に詳しい知人から情報収集することだって可能です。自分が無知であることを認識していないことは、とても残念なことだと思います。

問題その2:柔軟性の欠如

もう1つの問題は、店内の雰囲気を感じて柔軟に態度を変更できなかったことです。事前の知識がなくても、大人が静かな雰囲気の中会話を楽しみながら過ごしている店内の雰囲気を感じて「名刺交換は後にしましょう」と行動を変えることができなかったことが問題です。それは私を含め、この場にいた参加者全員が反省すべき点だと思います。

ビジネス会食とはいえ、レストランは公共の場。そこでの振る舞いとしてあるべき姿を考えることは、みんなができたはずです。我々のような団体客を見て、自分が逆の立場だったらどう感じるか?などを考えることができれば、あの時取るべき行動は変わっていたはずです。

、、、と、いろいろと書いてきましたが、なぜ出張先での出来事をブログで語っているのかというと、実はこれは異文化理解でもとても重要なポイントだからです。

「無知の認識」と「柔軟性の発揮」は異文化理解では必須

あなたが海外のビジネスパートナーと働く時、相手の考え方や行動を理解できないことがあると思います。その時に大切なのは「自分が無知であることを認識すること」そして「その上で相手の言動の背景にはどんな考え方があるのか」を考えることです。考えてみてもわからない時は、相手に聞いて確かめることが大切です。

質問をしてその背景を知った時に、自分の認識と相手の考え方にギャップがあることに気づくでしょう。そのギャップを埋めるように自ら行動することが「柔軟性を発揮すること」であり、質の高い仕事をしていくために必要不可欠なのです。

リーダーこそ「無知の認識」と「柔軟性の発揮」を認識している

私はこれまで30カ国以上の人々と仕事をしてきました。そしてたくさんの素晴らしいリーダーから学んできました。

その経験からわかったのは、リーダー的な立場の人ほどこの重要性に気づき、自発的に相手の考え方のクセと自分の認識の違いを察知し、自分自身を変えようと努力している、ということです。もちろん、職場で働く全員が敏感なわけでないです。でも、この大切さに気づいている人の周りには必ず人が集まり、素晴らしいチームワークを発揮しています。

そんなリーダーに感化され、私もマネをし、グローバルなプロジェクトにおいて少しずつですがお客様から感謝される事例が増えてきました。ビジネスパートナーの国民性、その企業のビジネスフェーズなどを事前に調査し、人間関係構築に役立ったこともあります。また機会があればその辺りの話もご紹介したいと思います。

「自分が無知であることを認識すること」と「柔軟であること」、これからもお互いに大切にしていきたいですね。

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