2023.2.1異文化理解

ブリッジSEが鍛えるべき異文化理解力について

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昔関わっていたあるプロジェクトにて、クライアント側とオフショア開発チームの意見の相違が多く、オフショア側にてメンバーの途中離脱が何人も発生しました。

状況改善に奔走した時、あることに気づいてコミュニケーションスタイルを変えたところ、プロジェクトの進行がスムーズになり状況が改善したことがあります。

今日は、その時に気づいた日本企業と海外企業の価値観の違いと、異文化理解力の大切さについて私の考えを述べます。これが正解!というものではありませんが、一つの考え方として捉えていただければと思います。まずはどんな問題が起きたかをご紹介します。

起きた問題

あるプロダクトの新機能開発を行うプロジェクトにて、打ち合わせにて合意した通りの成果物がオフショア開発チームから出てきませんでした。先方に理由を聞いたところ、今回の成果物の方が会議で合意した内容よりも合理的なソリューションだから、ということでした。

依頼元のクライアント側としては、合意した内容にて進めるということで社内調整は済んでいるため、それ以外の提案での進行は避けたいと思っていました。

議論が収束せず、意見の違いを埋めるのに時間がかかりました。納期ギリギリまでこのような議論が続き、両社の関係者は疲弊していきました。これと同じ上な状況が同時並行で進む他案件でみられ、プロジェクトから何人も離脱者が発生する事態となりました。

両者の主張やプロジェクトの経緯や状況を冷静に分析したところ、あることに気づきました。

日本企業の開発スタイルは「決まったことを正確にこなす」ことを価値とする

なぜ日本側が疲弊したかというと、ピラミッド型の組織である点や、システム開発においては(開発する機能にもよるが)まだまだウォーターフォール型を志向する傾向にあるからだと考えました。

ピラミッド型組織では、幹部の承認によってプロジェクトが進みます。また、幹部が指示した内容を踏まえた成果物になっていないと、プロジェクトが進まないこともあります。

一方、今回取り上げているオフショア開発企業には以下のような特徴がありました。

海外企業の開発スタイルは「問題解決のために既成概念を捨てる」ことを価値とする

この企業が大切にしていたのは「問題解決のベストアプローチを探し開発する」という姿勢でした。そのためには既成概念を捨てることも厭わない姿勢でプロジェクトに取り組んでいました。

また幹部は現場の判断に細かい口出しはしないため、現場で支持される意見はすぐにクライアントに提案できるようなフラットな文化がありました。

これらを踏まえ、私はオフショア側のメンバーが離脱していった理由は「日本側の開発スタイルを理解するのが難しかったからではないか?」と考えました。状況を打開し改善するため何を変えるべきか考えた結果、私はコミュニケーション方法を以下のように変えました。

開発案件の性質に応じてあるべき方向性を明示

案件の内容によってあるべきアプローチを最初から明示するようにしました。例えば、

  • ・この案件は過去の経緯を踏襲をすることによって質を担保できるため、合意した仕様通りに実装したい
  • ・別の案件はクライアント側も解決策を見出していない新施策につき、新しい提案を踏まえ仕様決定していきたい

という風に、案件の状況に応じて進むべき方向性を擦り合わせて業務を進行するようにしました。

オフショアチームには日本サイドの意思決定プロセスや仕事の進め方を理解してもらうために、以下のようなことを丁寧に説明しました。

  • ・案件の重要度やその時のビジネスの状況によって、QCDのうちどれを優先すべきかは変わる
  • ・日本では、仕様通りのものを納期内に作り上げる仕事も価値ある仕事の一つとされる
  • ・クライアント社内の状況、案件が発生した背景、その件に関わる人々とその立場

そして説明することで、そのアプローチがいかに合理的であるかを理解してもらうようにしました。これを繰り返していくと、オフショア側もクライアントの理解者になってくれるメンバーが増えていき、徐々に事態を収拾することができました。

このことから、オフショア開発パートナーにできるだけ丁寧に事情を説明していくことの大切さを学びました。説明を心がけることで、決定した仕様通りに開発することも、既成概念を捨ててアイデアを活かす開発も、両方価値あることだという共通理解を持ってプロジェクトを推進することができるようになりました。この経験を通じて感じたのは以下です。

ブリッジSEは異文化理解力も鍛えるべき

ブリッジSEとしていい仕事をしようと思うと、異文化の間で両者の考え方の違いを理解し、それを調整しながらいい方向に両者を導いていく力が求められます。

企業が違えばそれぞれが持つ文化も違います。これは異国の企業同士のケースだけではないと思います。もっと言えば、同じ組織にて働いていても、所属する部署によって文化が違うことだってあります。文化が違う者同士いい仕事をしようと思うと、両者の考え方の違いはどこから来ているか?であったり、それを良い方向に導くために今必要なことは何か?といったことを冷静分析し、行動していくことが求められます。

ブリッジSEはまさにその間で仕事をするので、特に両者の文化の違い、考え方の違いに注目して業務を推進していく感性が求められる仕事だなと感じます。いろんな問題に直面し解決しながら、これからも経験値を高め、質の高い仕事をできるようになっていきます。

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