企業分析のお作法 キャッシュフロー計算書編

損益計算書はなんとなくわかるけど、キャッシュフロー計算書は何いってるかわからん!という方、多いんじゃないでしょうか?

実は私もMBAを勉強するまではさっぱり素人でしたが、会計を勉強するにつれてキャッシュフロー計算書の重要性を理解するようになったので、今日はその見方を共有したいと思います。

今日紹介する見方を覚えておけば、ビジネス教養としては十分理解できる知識レベルになると思います。それではどうぞ!

損益計算書とキャッシュフロー計算書の違い

損益計算書は企業の成績表です。以下の図のように、売上から各種利益までブレイクダウンすることで企業の収益性を見ることができます。

損益計算書は収益や費用が発生した時点で計上されるものです。回収していない売上(売掛金)も売上に含まれるため、企業が保有するキャッシュの実態を反映したものではありません。

一方キャッシュフロー計算書は「回収・支払い時点で発生するもの」なので、実際のお金の流れを把握することが可能になります。

企業のステージによってキャッシュフロー計算書の形が違う

キャッシュフロー計算書はグラフにするとわかりやすいのですが、企業のステージによって形が様々です。逆にいえば、パターンを覚えておけばその企業の事業ステージや状況を理解することができるようになります。

ということで、キャッシュフロー計算書が製品ライフサイクル(事業ステージ)ごとにどう違うのかを紹介したいと思います。

導入期のキャッシュフロー計算書

導入期の例として、マネーフォワード社のキャッシュフロー計算書を紹介します。

期首残高(期のはじめに保有するキャッシュ)から以下のような推移となっています。

営業CF:マイナス
投資CF:マイナス
財務CF:プラス

これが何を意味するかというと、本業ではまだキャッシュがプラスになるような稼ぎ方をできず、手持ちを超えるほどの将来投資を行い、さらに資金調達でキャッシュを保有し直すという状況です。

営業CFがマイナスなのは、顧客に販売できていたとしても広告宣伝で費用がかさんでいる状態なんだろうと読み取りました。ベンチャー企業は、ビジネスを軌道に乗せるためにいかに資金が必要かがわかりますね。

成長期のキャッシュフロー計算書

成長期の例ではTwitter社のキャッシュフロー計算書を紹介します。

Twitter社のキャッシュフローは以下のような推移です。

営業CF:プラス
投資CF:マイナス
財務CF:マイナス

つまり、Twitterは本業でしっかり収益をあげながら将来への投資を行い、かつその稼ぎでしっかり返済もしているということです。2019年の実績では、稼いだ営業CFめいっぱいの投資と返済をし、若干保有キャッシュが少なくなっています。

自社の保有キャッシュは十分にあると判断し、長期的成長を目指してアクセル全開で活動していると読み取ることができます。

成熟期のキャッシュフロー計算書

成熟期の例はJR東日本のキャッシュフロー計算書を紹介します。

JR東日本のキャッシュフローは以下のような推移です。

営業CF:プラス
投資CF:マイナス
財務CF:マイナス

JR東日本は1年で7,000億超のキャッシュを稼いでいますね。そのほとんんどを投資と返済に回し、期末の保有キャッシュが若干増えています。

このように本業の稼ぎで投資と返済を行っているグラフは、優良企業にみられる特徴になるので、ぜひ覚えておきましょう。

衰退期のキャッシュフロー計算書

衰退期の例は先日経営破綻したレナウンのキャッシュフロー計算書を紹介します。以下はレナウンが最後に公開したキャッシュフロー計算書をグラフにしたもので、この2ヶ月後に経営破綻しました。

営業CF:マイナス
投資CF:プラス
財務CF:マイナス

これが意味するのは本業で稼げなくなり、保有の固定資産を売却して資金を作り、それをつなぎ資金として給与の支払いや返済に充てていたということです。実際に有価証券報告書の内訳をみてみると、土地建物の売却をした旨が記載されていました。

成熟産業で事業を行い、本業で稼げなくなると倒産リスクが高まります。よって銀行は融資をしなくなり、投資家は資金の提供をしなくなります。その代わり銀行は融資資金を回収すべくあらゆる手段をとります。グラフはまさにその試行錯誤を表す形をしていますね。一つのケースとして覚えておきましょう。

製品ライフサイクルと資金需要の関係性について

補足として、製品ライフサイクルと資金需要の関係性についても触れておきたいと思います。

↑のように、導入期は顧客獲得のためにマーケティングは教育啓蒙的な動きが必要です。よってそのための資金需要が大きくなります。

成長期は文字通り事業が急成長している時期なので、販売拡大のために資金需要が大きくなります。競合も増えてくるのでマーケティングにおいては自社の特徴を明確にする戦略が求められます。

成熟期は製品・サービスの認知が進んでいるため、マーケティングに費用をかけなくても売上があがります。よって資金需要は低下する傾向にあります。そして成熟期に一番営業CFを稼ぎます。利益も一番大きい時期になる傾向があります。

衰退期は事業が衰退しているので、企業としては他の事業に新規投資をすべき時期です。よって当該事業での資金需要は低下します。事業が一つしかない会社はその事業の立て直しが必要なため資金需要は高くなります。

キャッシュフロー計算書をグラフにすると企業の状態を理解するのに役立つので、企業分析をする際はぜひ試してみてください。